2018年12月16日追記:国土交通省より、羽田空港新ルートに関してまとまった資料が公開されています。資料は各地で開催される住民説明会会場で入手できます。

住民説明会の予定はこちらを見てください。


羽田空港に発着する国際線の便数を増やすため、大井上空を低空で飛ぶ新ルート案が国土交通省より提出されています(2018 年 12 月現在)。東大井、南大井に騒音被害が出る予定なので、2016年1月に大井町で開かれた説明会にちょっと立ち寄ってきました。その時の情報をもとに、騒音問題を下記にまとめました。

国土交通省からの説明資料は「羽田空港のこれから」を参照してください。

いつから?

新ルートの運用開始時期は未定です。
2020 年までには新ルートになるでしょう。
 

どこを飛ぶか?

新ルートでは、南風運用時、15 時から 19 時の間、A 滑走路および C 滑走路に着陸する飛行機が東大井、勝島、南大井、八潮を通過します。
その時の高度は大井町駅付近で 300m、大井競馬場で 200m くらい。東京タワーより低い高度で進入してきます。
 
図: 紫の線がおおよその着陸コース。左側が A 滑走路進入路。右側が C 滑走路進入路。
 
図: A 滑走路進入路、東大井付近拡大図。半透明の部分を中心に飛びます。枠外でも飛びます。
 
図: 一定程度の騒音が出ると予想される地区詳細その1。この地図内に住んでいたら一定程度の騒音を感じます。
図: 一定程度の騒音が出ると予想される地区詳細その2
 
 
図: 一定程度の騒音が出ると予想される地区詳細その3
 
 
図: 飛行機が真上を飛ぶ可能性のある地域(予想)。半透明の部分です。
 
羽田の A 滑走路に着陸する場合、大井町を通った後、都営元芝アパート上空、鮫浜小学校上空を通過、勝島運河、ホーマックあたりを飛んで、大井競馬場に到達する経路です。全部の飛行機がここを通るというわけでなく、大体この線の周りを飛んでくるといった感じになるようですね。一部の飛行機は大井第一小学校、鈴ヶ森小学校、鈴ヶ森中学校上空を通過することもあると思います。下図参照。
出典:https://trans.civil.ibaraki.ac.jp/hirata/JSASS2012noise.pdf
A 滑走路と C 滑走路合わせて1時間に約 45 本くらい飛ぶ計画で、品川区上空を一分数十秒に一回の頻度で上空をガンガン通過します。
 
現状でも下記のような感じで飛行機が次々と飛んでいます。2016年1月23日16時ごろのデータ
 

騒音はどれくらい?

国土交通省は試験飛行を実施しないとしているので、実際に飛行機が飛び始めないと音の大きさがわかりません。
国土交通省の試算によるとボーイング 777 が飛んできた場合、大井町駅 (高度 300m) での騒音が最大 80 デシベル。だいたい目ざまし時計、救急車のサイレン、地下鉄車内と同じ音量になります。
ただ成田空港周辺の測定値では着陸態勢の飛行機が高度 300m の地点で、85, 86 デシベルの騒音を出していますので、どうなるか、飛んでみるまでわかりません 成田国際空港周辺航空機騒音測定結果)
 
騒音の感じ方には個人差があり、飛行機なんか気にならない、という人がいれば、うるさくて気が狂いそうだ、という人も出るかと思います。現状、千葉県側で羽田空港の騒音に悩まされている人たちがいて、Google で「羽田 騒音 千葉」 というキーワードで検索すると、既に千葉県側で困っている人たちの状況を知ることができます。
 
ときに 1973年、羽田空港が沖合展開する前の測定結果が残っているので見てみましょう。この時代、飛行機は今よりも内陸寄りを飛んでいました。
 
場所 週間パワー平均値
(デシベル)
都立工業高専 86
立会小 84
浜川小 85
日立大森別館 78
平和島ポンプ場 86
出典:https://www.tokyokankyo.jp/kankyoken_contents/report-news/1975/1975soon-shindo5.pdf
 
現在ではこの時より飛行機の性能が良くなり、騒音も少なくなっています。また A 滑走路、C 滑走路の両方とも海側に移転しましたので、この数値はあくまで参考と考えてください。
ただ新コース運用時の発着回数は年間 49 万回、1980 年代の発着回数は年間約 14 万回とのデータもあり、飛行機が飛んでくる頻度は 1973 年の 3 倍以上になるので、昔の横浜ベイスターズのマシンガン打線のようにじわじわとダメージが効いてくるかもしれません。
現在でも城南島へ行けば南風運用時に飛行機が1、2 分ごとに下りて来るところを見ることができます。
 

建物により騒音が増幅される可能性あり

城南島とか京浜島を歩いていただけるとわかりますが、飛行機の騒音が建物で跳ね返り、場所によって局所的に騒音が大きくなったりと小さくなったりします。たまたま音が増幅される場所に家が建っていたり、部屋があったりすると、これはもう大貧乏くじを引いたに等しいこととなります。
 

騒音による健康被害は?

イギリスの医学誌 British Medical Journal 2013年10月12日号に、ヒースロー空港周辺の住民を調査した報告が載っています。
騒音がより大きいエリア (昼間 63 デシベル超) に住む人は、騒音が少ないエリア (51 デシベル以下) の住民と比べて心血管疾患、脳卒中、冠動脈性心疾患を発症するリスクが高いとのことでした。
https://www.bmj.com/content/347/bmj.f6082
 

いつ飛ぶ?

南風運用時の 15 時から 19 時です。年間約 40% が南風運用になるとのことですが、私の方では現状羽田の運用実績値が見つけられませんでした。だれかください。こちらは2018年に国土交通省からのデータを入手できました。過去3年間の平均(期間不明)。


南風運用の割合(%)
110
214
322
443
556
647
757
838
930
1013
1110
1212

冊子「羽田空港からのこれから」国土交通省航空局 v.5.0.1より。 


参考までに、下記に 2015 年、羽田のアメダスで計測された毎日の風向きのうち、南風が何日あったかを月別に示した表を載せました。

 
南風の日数
1 4
2 3
3 10
4 13
5 24
6 21
7 26
8 15
9 11
10 8
11 3
12 4
5 月から 8 月にかけて南風の日が多くなっていて、ちょうと窓を開けたくなる季節に戸外で騒音がし、窓を開けられない状態となります。
 

落下物の危険あり。

成田空港周辺ではここ 10 年間で 18 件の落下物がありました。新ルートでも当然部品か氷が降ってきます。落下物事故のほとんどが着陸時に起きているとのことで、着陸コース上の品川区はちょっとまずいです。着陸用の車輪を出す時の衝撃で物が落ちるとの説もあり、どのくらいの高度で車輪を出すのか調べてみました。高度 600m から 300m のあいだで車輪を出すとのことなので、渋谷区、港区、目黒区、品川区あたりで車輪を出すような感じでしょうか。
氷にあたって死んだ場合、証拠が残らずに殺され損になるかもしれません。時事通信によると成田空港周辺の落下物は 2015 年に 4 件あったそうです。
2014 年には君津市で飛行機から落ちたと見られる氷が工場の屋根を直撃、屋根を突き破るという事故が起きています。
https://www.chibanippo.co.jp/news/national/211017
 
また米国発の下記記事では、庭で 16歳の誕生パーティーをしていたら飛行機からの汚物が降ってきてひどい目にあった、という話しが紹介されています。
https://www.huffingtonpost.com/2015/05/20/plane-dumps-poop-party_n_7341850.html
飛行機のトイレの水(青い水)が氷となって落ちてくることをブルーアイスと言い、Wikipedia にも Blue Ice の項目があるので、まあ時々あることなのでしょう。
 

テロの危険はないか

不明です。
ただ騒音に怒った住民が突発的に何らかの騒動を起こすかもしれません。
アメリカでは近所の飛行場からでる騒音に激怒した女性が拳銃を持って空港に殴り込みをかけるという事件があったようです。
https://gigazine.net/news/20090902_woman_shoot_plane/
 
打ち上げ花火等の規制がどうなるかわかりませんが、鈴小の夏花火、ペットボトルロケット程度であれば今後とも大丈夫ではないでしょうか。
 

今後どうするか

下記の選択肢があります。
  • 我慢する
  • 引っ越す
我慢するとしても、継続的に声を上げて、下記の約束を国土交通省との間に取り付けることが必要なのではないでしょうか。
  • 北風運用時には飛行しない
  • 15時-19時以外は飛行しない
  • 大型機 747-8、A380 は進入させない
黙っていると、そのうちに「一定程度住民の理解が得られた」とか言って、運用時間が拡大され、また北風時の離陸用大井通過コースが設定されてしまうでしょう。
北風時に大井の上を離陸していけば発着本数をもっと増やせます。
離陸時の騒音は着陸時より大きいので、将来的に A 滑走路からの北向き離陸が始まると爆音の日々が始まります。
政府は羽田の国際線を増やしていく作戦のようなので、さらなる都心コースの拡大には要注意です。
 

国土交通省への意見

国土交通省への意見は国土交通省のサイトで受け付けています。
 

関西空港にがんばってほしい

羽田のパンク状態を解消するには他の空港にもがんばってもらいたいところです。今後の羽田需要増加分は国際線分なので、国際線が他の空港に降りれば、その分羽田は緩和されます。京都奈良を訪問するのに東京に降りる必要はありませんし、電気製品の買い物であれば京阪神地区でも十分できるでしょう。諸外国のみなさん関空を利用してください。
 
下記の表を見てください。空港別の2014年度国際線旅客数を表しています。関西空港の旅客数が、副業で国際線をやっている羽田に追いつかれようとしています。
羽田の国際線旅客数は 2015年 11月の統計で前年同月比 19% の増加です。
中部空港はもうお話にならない問題外の少なさ。関空がんばってくれ。
空港 国際線旅客数
成田 26,668,216
関西 14,620,934
羽田 11,570,131
中部   4,413,531
東京航空局、大阪航空局それぞれの利用実績速報より
https://www.cab.mlit.go.jp/tcab/statistics/01.html
https://ocab.mlit.go.jp/about/total/report/
 
大阪南部に国際お買い物特区でも作って、爆買いツアーを関空で吸収して欲しいものです。
 

コストをかけて作った D 滑走路は?

新コースの南風運用時、15時から19時の間は D 滑走路を使いません。